1 俳優を、ふるまいのアーキビストと捉えてみる。
2 アーキビストとは、アーカイブをする人のことで、永久に保存する価値のある情報を、選んで、集めて、整理して、保存して、管理して、見ることができるよう整える専門職をさす。よって、人間のふるまいを人間がやって残しても、アーキビストの仕事とは遠いとされるだろう。 しかし、日本において、建物や制度や芸術作品よりも、それらを作る技術の方が事実上長く保存されてきている。つまり、日本でアーカイブを考えるのならば、物体ではなく、ふるまいの継承において考えられるべき事だ。それは、かつてのふるまいを、リプレゼンテーション=再演/上演可能なふるまいとして継承することを意味する。
3 ふるまいは、個人の行動だけでなく、状況における行動をさす。状況には他人も含まれる。 よって、俳優は、ふるまいをアーカイブするために、集団になる必要がある。 また、その状況も含めてアーカイブするために俳優以外の人も必要になる。 そして、ふるまいをアーカイブするとは、動きをトレースするだけでなく、そのふるまいの意義や状況など、意味するところも含めてアーカイブすることが使命である。
4 俳優は、わざおぎという古語の当て字である。わざは技であり、おぎは招くの意味だ。即ち、神を招く技をもつものを俳優(わざおぎ)と呼んだ。そして、多くこの職業は滑稽芸や曲芸をやったという。天岩戸や神道の葬式から考えるに、日本では神を招くためにこそ滑稽な技を使ったのだろう。私は、この言葉を、消えて行くものとしての先祖やオーラのような、ある状況のふるまいに伴う意義をも含め再現する、すなわちその場に招く技をもった存在と捉える。
5 ここでいう俳優はアクターでもプレイヤーでもない。
ふるまいのアーキビスツ【戯曲】
Feb9. 2014,
Feb11. 2014
「漱石『こころ』5雑司ヶ谷霊園のくだり」
@豊島区 雑司が谷周辺 |としまアートステーション構想2013 参加
【出演】遠藤麻衣,カゲヤマ気象台,武久絵里,橋本匠
ふるまいをアーカイブするとは、生きながら死者となることではないか。漱石の『こころ』を、そのような感覚の反復と捉え、墓参シーンのテキストを使用し、アーキビスツの活動を実演して示した。
カンパニーふるまいが、としまアートステーション構想の依頼により企画した調査プロジェクト「としまのふるまい」の第2回発表会「ファウンデーション」の中で、ふるまいの調査研究と発表の試みとして上演された。